東京大学の2015年に行われた公開講座より。
酒井先生は、脳科学を専門にしながら、チョムスキーの言語学(先生に言わせればチョムスキーは科学的であるそう)も取り入れながら研究をされている先生です。
人間の言語の特徴は、『単語としての「言葉」ではなく、構造を持つ「文」の使用』ができるという意味で、チョムスキーの生成文法を引用しながら、脳科学につなげて言語と心の関係を研究されています。
また言語と運動性の関連で言えば、「メタ道具(道具の道具)」が使いこなせるというのも人間独自の能力です。火の使用と同様(「火」そのものではなく「火」を使いこなせる知能)、こうした言語と動作性の関係においては、「道具をどう使うか」という創造性があり、それを記述し保存する「言葉の本能」という重要性を先生は主張されているように思いました。
ちなみに、
チョムスキーの生成文法について先生がもう少し触れている高校生向けの講座はこちら。
さて、この先生のお話とロールシャッハとの関連で言えば、以下のような音楽を用いた説明が示唆的です。
音楽という「再現芸術」;楽譜という圧縮された情報から、演奏者が「心」を再構築(解凍)して、作曲者と演奏者の「心」を聞き手に伝える。この事自体が、言語と心の関係を表している。
これをロールシャッハテストに当てはめると、インクブロットという圧縮された情報から、被験者が「心」を再構築(解凍)して、検査者に伝える。
阪大法的には、圧縮(絶対化)された情報を相対化させながら、反応として算出するプロセスがその過程として想定されますが、その相対化のあり方やそこでの被験者の体験過程が、その人の再構築された「心」として見ていくわけです。そしてこの中で、「外輪郭形態把握」「複合」などの様相を見ていく。そんな理解ができそうです。
後半の先生のお話の中で、「言語の創造的プロセス」という話題がありますが、①新たな発話を生み出したり理解したりできる(創造的プロセス)一方、②新たな列を属さないものとして退けることができる。という話があります。チョムスキーは言語的創造性をこのように、「生み出すことと捨てること」の“二重性”にあると考えた。この事も阪大方をご存じの方であれば、「フィードバック」の話と共通点があると気が付かれると思います。
「言語学」ー「運動」ー「ロールシャッハ(阪大法)」との緩やかな関連性がこの話にも現れていると感じました。チョムスキーの目標であった『「人間の本姓」そのものを把握できるような科学に発展させたい』という思いに、阪大法をくっつけることはできないかな?
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