2015年に開催された「第一回京都こころ会議」の基調講演より。
『中沢新一・明治大学野生の科学研究所長は、神経科学により発見された「ニューロ系」と、精神分析において理論化された「こころ系」というこころの構造の二通りの理解について紹介したのち、両者を通底する原理としての「ブリコラージュ」と「ホモロジー」という二つの概念を提示し、人文科学と自然科学を統一する方向性を示した(京都大学新聞より)』
最近の学問界では新しいトレンドとして、様々な異なる分野の学問同士を橋渡しして、単一の学問内で生じていた限界を広げ、新しい発見を生むような動きが活発に見られます。この会議での中沢先生の話にも、精神分析やゲシュタルト心理学と認知科学、経済学、果ては言語学までもをつなげてお話を展開されています。異なる考え方や学問分野はこれまで相互交流が少なく、ややもするとお互いを深く知ることなしに無視したり批判をし合ったりしていたようなところもありましたが、これからの知の発展にはいろんな学問間の横のつながりが重要になってくるようです。
またこの中で、中沢先生がフロイトの一時過程における「圧縮」が、最も彼の最大の発見であるとおっしゃっているのも面白いですね。臨床心理学だけを学んでいると、フロイトの功績として無意識やコンプレックスに目を向けがちですが、確かに「圧縮」はその後のクラインを始めとしたプレエディパル理解の基礎にもなっているし、それが言語学や認知発達のベースになっているわけですから、なるほどと感じるところがあります。
そしてさらなる展開として、「ブリコラージュ(がらくたの寄せ集め)」という中沢先生の専門であるレヴィ=ストロースの思考のお話が後半つながっていきます。
なかなか興味深いお話でした。
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