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発達心理学とロールシャッハの接点

更新日:2020年3月14日

以下の京都大学の大山泰宏先生の動画を参考に、阪大法の発達理論とのつながりを考えてみたいと思います。



大山先生は子どもの発達を、①フロイトの潜伏期と、②ピアジェの「前操作期」ー「具体的操作期」あるいは「具体的操作期」ー「形式的操作期」の間で起こっていることを関連させて、その後③発達障害の子どもの特徴を重ねながら説明されています。この話の中で特に印象的だったのは、「前操作期」と「具体的操作期」の移行の段階において、正常発達ではトランプゲームの“神経衰弱”がだんだんと不得意になっていくというお話。


“神経衰弱”は『見えたまま』をぱっと画像的に理解し、それを保持する能力が発揮されるゲームと考えると、そうした能力が優勢な「前操作期」の段階では結構成績が良いのですが、「具体的操作期」あるいは「形式的操作期」に移行し始めると、物事の背景や目の前には見えないもの、論理的に考えること等にエネルギーを使うようになり、結果的に“神経衰弱”の成績が落ちていくと先生は説明されておりました。うーん、なるほど。


ぱっと見えたものをとらえて反射的に判断するだけでは現実把握は不十分であり、発達段階的には初期の認知構造のあり方である。それがさらに発達すると、見えたものが何によって成立しているのかという観察力や分析力、多面的見方等が加わって、より正確な全体認知となっていく。そこに関わるある種の基本的構造を、ピアジェは「操作」という言葉を用いて表現したのでしょう。


一方阪大法は、学童期における把握型の発達を、①(W)やDWといったぼんやりとした全体把握から、②D分割ならびに正確なD把握、そして③その総和がWになっていく、という流れ(ΣD=W)として捉えています。またこうした中で、「外輪郭形態把握」という“正確な外輪郭把握が他の要素に比して抜きん出て重要である”という認識が、安定したF+の産出につながるとも考えます(自我境界の成立とも関係する)。つまりこうした段階は「パッと見て判断する」形から、注意深く物事を判断したり、論理性も含んだ判断力が可能になる時期への移行を示しており、先のようなピアジェの発達プロセスと重なる流れを想定しているのです。よって阪大方では、被験者の反応からその体験がどのあたりに定位するのかを精査する事も重要な解釈要素になっています(例;Ⅰ図版の「こうもり」という反応も、P反応ではあるけど、これがきちっと外輪郭形態を押さえた反応なのか、図版の構造や状況性に支えられてパッと出た反応なのかを判断する)。


大山先生が説明するピアジェの発達理論や神経衰弱の話題と、阪大法の考え方を重ねて説明をしてみました。何となく共通性がご理解いただけたでしょうか?。難解だと思われがちな阪大法が馴染みのある話になっていくと嬉しく思います。


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